民泊の収支シミュレーション|「黒字になるはず」で始めないために見るべき数字

「この物件なら、月にどのくらい利益が出そうですか?」
民泊を始める前に、一番気になるところだと思います。
家賃が15万円で、1泊3万円。月に15泊入れば45万円だから、十分利益が出そう。
数字だけを見ると、簡単に計算できます。
ただ、実際の民泊運営では、宿泊料金がそのまま手元に残るわけではありません。
清掃費、光熱費、予約サイトの手数料、アメニティ、消耗品などがかかります。また、開業前にも家具・家電や設備などの費用が発生します。
民泊の収支を見るときは、「売上はいくらか」より先に「何にお金が出ていくか」を確認する。
この順番が大切です。
今回は、これまで実際の民泊運営や収支相談をしてきた中で、私が収支を見る際に確認しているポイントをまとめます。
まず「売上」と「利益」を分けて考える
例えば、1泊3万円で10泊予約が入れば、単純な宿泊売上は30万円です。
ただし、30万円すべてが利益ではありません。
そこから運営にかかった費用を差し引く必要があります。
売上 − 運営にかかった費用 = 実際に残る金額
まずは、このシンプルな考え方から始めます。
当たり前に見えますが、物件を検討している段階では、どうしても「1泊いくらで貸せそうか」に目が向きます。
一方、実際の相談では、宿泊単価だけでなく月間予約件数と費用内訳を一緒に確認しています。
毎月かかる費用を先に洗い出す
まずは、運営を続ける限り発生する費用を整理します。
主なランニングコスト
- 家賃または物件に関する費用
- 清掃費
- 電気・ガス・水道
- Wi-Fiなどの通信費
- アメニティ・消耗品
- リネン関連費用
- OTA(予約サイト)の手数料
- 運営代行・管理費
- 修繕や備品交換の費用
施設によって項目は変わります。
例えば、自分で清掃すれば当初の現金支出は減ります。一方で、物件が増えれば清掃を外注する可能性も高くなります。そのため、「今は自分でやるから0円」だけで計算するより、将来的に人へ任せた場合でも成り立つかを見ておく方が安心です。実際の相談でも、家賃・光熱費・Wi-Fi・清掃費などを把握すると、収益モデルの改善点がかなり見えやすくなります。
開業前にかかるお金も忘れない
月々の収支だけでなく、オープンまでの初期費用もあります。
例えば、
- 家具、家電
- 寝具、リネン
- 食器、調理用品
- アメニティ
- 写真撮影
- 必要な設備や工事
- 申請や開業準備に伴う費用
築古物件であれば、さらに修繕やリノベーションが必要になる場合があります。
ここで気を付けたいのが、
「開業できるところまでに、結局いくら必要なのか」
を見ることです。
物件取得費だけ安くても、その後の工事や設備に大きな費用がかかれば、最終的な投資額は変わります。
稼働率だけを高く設定しすぎない
収支シミュレーションを作る時によくあるのが、予約が順調に入る前提で計算してしまうことです。
例えば、
「月30日のうち25日くらい埋まれば……」
と計算すると、当然数字はきれいになります。
しかし、オープン直後からその数字になる保証はありません。
季節、曜日、立地、レビュー数などによって予約状況は変わります。
そのため、私は最初から一つの数字だけで考えない方が良いと思っています。
① 厳しめの場合
想定より予約が少なかった場合。
② 現実的な場合
周辺相場などから考えた基本ケース。
③ うまくいった場合
繁忙期などで予約が伸びたケース。
最低でもこの3パターンを見ると、
「予約が少ない月でも固定費を払えるか」
が分かりやすくなります。
元の運営資料でも、予想外の費用が出ることを前提に、年間・月間の目標を考えながらトライアンドエラーで調整する考え方を取っています。
「利益を出したい価格」と「売れる価格」は違う
ここはかなり大切です。
収支表を作ると、
「このくらい利益を残したいから、1泊4万円必要」
という数字が出ることがあります。
ただ、その地域で類似施設が2万円台で販売されていれば、4万円に設定したからといって予約が入るとは限りません。
実際のコンサルでも、経費から逆算した「理想価格」が市場で予約されやすい価格より高くなっているケースがありました。
原価から価格を決めるだけではなく、市場がその価格を受け入れるかも確認する。
高く設定して予約が入らなければ、売上は0円です。
だからこそ、物件を契約してから、
「最低でも1泊○万円取らないと赤字だった」
と気付くのでは遅い場合があります。
契約前の段階で周辺施設の価格帯も確認しておくことをおすすめします。
清掃料金を売上として見すぎない
予約サイトでは、宿泊料金とは別に清掃料金を設定することがあります。
この清掃料金もゲストから受け取る金額なので、売上には見えます。
ただ、その裏では実際に清掃スタッフへの支払いやリネンなどの費用が発生します。
そのため、
清掃料金5,000円を受け取った=5,000円利益
という見方はしません。
ゲストから受け取った金額ではなく、最終的にいくら残ったかを見る。
ここを統一しておくと、収支がかなり分かりやすくなります。
まずは簡単な収支表で十分です
最初から複雑なExcelを作る必要はないと思っています。
最低限、
- 月間宿泊売上
- 実際の宿泊泊数
- 平均宿泊単価
- OTA等の手数料
- 清掃費
- 家賃
- 光熱費
- その他の運営費
- 最終的に残った金額
この程度でも、数ヶ月分並べるとかなり見えてきます。
例えば、
「売上は増えたのに利益が増えていない」
のであれば、清掃費や値引き、その他の費用が増えている可能性があります。
逆に予約数が少なくても、平均単価が上がって利益が増えているケースもあります。
まず数字を見えるようにしてから、価格や運営方法を調整します。
シミュレーションは「当てるもの」ではありません
収支シミュレーションというと、未来の売上を正確に予想するものに見えるかもしれません。
私は少し違うと思っています。
収支シミュレーションは未来を当てるものではなく、「この条件でも事業を続けられるか」を確認するもの。
実際に営業を始めれば、想定していなかった費用も出てきます。
予約が予想以上に入ることもあれば、その逆もあります。
だからこそ、
一度作った収支表を正解として固定するのではなく、実績が出たら数字を入れ直します。
私自身も運営では、数字を見て料金や運営方法を調整し、その結果をまた確認することを繰り返しています。
よくある質問
民泊の利益率は何%くらいあればいいですか?
物件取得方法、家賃、清掃方法、運営代行の有無などで大きく変わるため、一律の数字では判断しにくいです。
まず、自分の物件で固定費と変動費を整理し、どのくらいの売上で赤字にならないのかを確認することをおすすめします。
周辺の宿泊料金はどう調べますか?
AirbnbやBooking.comなどで、自分の物件と近いエリア・人数・広さの施設を検索します。
ただし表示価格だけでなく、平日・週末・繁忙期など複数の日程を見ることが大切です。
最初から高めの価格で始めた方がいいですか?
必ずしもそうとは思いません。
特にオープン直後はレビューや予約実績がありません。そのため、最初は予約されやすい価格から始め、実績を見ながら調整する方法もあります。
この価格戦略については、後のコラムで詳しく取り上げます。
民泊を始める前に、一度数字にしてみる
民泊は、良い物件を見つければ終わりではありません。
その物件を営業できる状態にするまでにいくらかかるのか。 毎月いくら出ていくのか。 そして、現実的な宿泊料金と予約数で、その費用を回収できそうなのか。 ここまで見て初めて、事業として判断できると思っています。 売上を大きく見積もるより、費用を小さく見積もらない。 民泊の収支シミュレーションでは、この方が重要です。 Lime Worksでは、民泊の物件選びだけでなく、想定する料金や運営費を整理した収支シミュレーションについてもご相談をお受けしています。 「この物件で本当に始めていいのか迷っている」という段階でも、お気軽にご相談ください。※本記事は、Lime Worksが実際の民泊・宿泊施設の運営および収支相談を通して得た経験をもとにまとめています。記載している費用項目は一般例であり、必要な費用や収益性は物件・地域・運営方法によって異なります。実際の事業計画については、ご自身の条件に基づいてご確認ください。
OTAの手数料や料金体系は変更される場合があります。最新情報は各予約サイトの公式ページをご確認ください。
参考:観光庁「民泊制度ポータルサイト『minpaku』」
Airbnbヘルプセンター「Airbnbサービス料」
観光庁は住宅宿泊事業に関する制度・手続きをまとめて公開しています。 Airbnbもサービス料の仕組みや料率について公式ヘルプで案内しており、料金体系が変更される可能性があることも明記しています。
